相続した実家、売る?貸す?持っておく? ── お金・手間・気持ちで比べてみました
「売ったほうがいいんでしょうか。それとも、貸したほうが」
相続した実家についてご相談をいただくとき、いちばん多い質問です。
以前、決める前に知っておきたい3つの期限を整理しました。今回はその続きとして、売る・貸す・持っておくの3つを、お金・手間・気持ちという3つの物差しで並べてみます。どれかをおすすめする記事ではありません。ご自身で選ぶための材料です。
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まず、3つを並べてみます
| お金 | 手間 | 気持ち | |
|---|---|---|---|
| 売る | まとまった現金が入る/税の特例に期限あり | 売るまでは手間/売れたら終わり | 手放す踏ん切りが要る |
| 貸す | 毎月入るが、先に修繕費が出る | ずっと続く(自分か管理会社か) | 他人が住むことをどう感じるか |
| 持っておく | 出ていく一方(税金・管理) | 見に行く手間が毎年続く | 実家が残る安心感 |
大事なのは、「持っておく」も何もしないことではないという点です。3つとも、違う形でお金と手間がかかります。
「売る」── 使える制度に期限があります
相続した住まいを売るときは、一定の要件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例(いわゆる空き家の3,000万円特別控除)があります。要件のうち、意識しておきたいのは次の点です。
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること(制度自体の適用期限は令和9年12月31日までの譲渡)
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、売却代金が1億円以下であること
- 相続してから事業・貸付け・居住に使っていないこと
最後のひとつは見落とされがちです。「とりあえず貸してみて、だめなら売ろう」と考えると、この特例が使えなくなることがあります。順番が結果を変えてしまう、数少ない場面です。
これは「貸さないほうがいい」という話ではありません。貸すと決める前に、この特例が使えるご実家かどうかだけ先に確かめておくと、あとで「知らなかった」がなくなります。建てられた年と、相続からの年数を見るだけでも目安になります。
なお、相続人が3人以上の場合、令和6年1月1日以後の譲渡では控除額が2,000万円になります。適用の可否は個別の事情によりますので、税理士または所轄の税務署にご確認ください。
「貸す」── 家賃がまるごと残るわけではありません
「売るのは忍びないから、貸そうかしら」。よくうかがうお話です。ただ、家賃がそのまま手元に残るわけではありません。
なお、貸す前には先ほどの3,000万円の特例が使えるご実家かどうかを確かめておくと安心です。貸したあとでは使えなくなることがあります。
先にお金が出ます。長く空いていた家は、給湯器・水回り・雨漏りなど、人が住める状態に戻す工事が必要になることがあります。ここは売る前のリフォームの話と同じで、どこまでやるかで金額が変わります。
そのあと、手間が続きます。家賃の入金確認、滞納の督促、設備が壊れたときの手配、退去時の立ち会い。ご自身でやるか、管理会社に任せるかです。管理会社に任せる場合の費用は、国土交通省の調査によると月額家賃に比例する方式(家賃の◯%)が78.2%と大半で、水準は4〜5%未満が38.0%、5〜6%未満が32.9%。家賃10万円なら毎月4,000〜6,000円ほど、という感覚です。
そして、空いている月は家賃がゼロです。年単位で見ると、思っていたより手元に残らなかった、ということは起こります。
「持っておく」── 何もしなくても、毎年かかります
住宅が建っている土地には、固定資産税を軽くする「住宅用地特例」があります。200㎡以下の部分は課税標準が価格の6分の1(都市計画税は3分の1)、200㎡を超える部分は3分の1(同3分の2)です。この特例について、知っておきたいことが2つあります。
ひとつは、建物を取り壊して更地にすると、原則として外れること。「古いし危ないから壊しておこう」が翌年の税額を押し上げることがあります(建て替え中の土地は別扱い。判断は市区町村の窓口へ)。
もうひとつは、手入れをしないまま置いておいても、やはり外れうること。令和5年12月13日施行の改正空家法で、管理が行き届いていない空き家は「管理不全空家」として市区町村の指導・勧告の対象になりました。勧告を受けると特例の対象外です。従来からの「特定空家」も同じです。
加えて、換気・通水・郵便物の整理・庭木の手入れが毎年続き、遠方にお住まいならそのたびの交通費もかかります。
それでも「実家が残っているだけで安心する」というお気持ちは、立派な選ぶ理由です。お伝えしたいのは、「持っておくと決めた」と「まだ決めていない」は別物だということだけです。
迷ったときは、「手数料」と「中身」で見ます
会社の大きさや知名度は、条件のよさの証明にはなりません。見るべきは手数料がいくらで、その中に何が含まれているかです。
売るときの仲介手数料には、宅建業法にもとづく法律上の上限があります。物件価格に応じた料率(200万円以下5.5%/200万円超400万円以下4.4%/400万円超3.3%・税込)で計算され、どの会社に頼んでも上限は同じ。令和6年7月からは800万円以下の空き家などは上限が33万円(税込)までとされ、媒介契約の前にその金額を説明して合意することが必要になりました。つまり売却では、手数料の「上限」で差はつきません。
貸すときの管理料は逆で、毎月ずっと引かれ続けます。だからこそ「何%か」より「その%で何をしてくれるか」です。先ほどの国土交通省の調査では、家賃の徴収(87.6%)や苦情対応(95.0%)はほぼ基本業務に入っている一方、日常清掃(21.9%)、法定点検(22.7%)、植栽管理(15.3%)を基本業務に含む会社は多くありません。同じ5%でも、中身は同じではないのです。
金額の大小ではなく、契約書に書いてある範囲を見る。売る・貸すのどちらでも同じです。
まずやることは、3つだけです
3つのどれを選ぶにせよ、先に済ませておくと迷いが減ることがあります。
- 名義と登記を確かめる……名義が故人やもっと前の代のままだと、売ることも貸すこともできません。相続登記は令和6年4月1日から義務です(詳しくはこちらへ)
- 毎年かかるお金を棚卸しする……固定資産税の課税明細書、火災保険、電気・ガス・水道の基本料金、マンションなら管理費と修繕積立金。1年でいくら出ていくのかを紙1枚に
- 家族で話す……いちばん後回しになりがちですが、いちばん大事です。「誰も住まない」という結論だけでも、共有できていれば次に進めます
この3つが揃ってはじめて、「いくらで売れるか」を調べる意味が出てきます。
エイジレス不動産は横浜・元町の会社です。売却をお決めになっていない段階でのご相談も承っています。リノベーションも手がけていますので、「直して貸す」「直して住む」まで含めてフラットにお話しできます。ご相談はお問い合わせフォームか、お電話(045-264-8147/9:00〜20:00・水曜定休)から。
「売る前提ではないのですが」で始まるご相談を、いちばん多くいただいています。どうぞお気軽に。
※空き家に係る譲渡所得の特別控除は、国税庁タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」に基づいています。適用の可否は個別の事情によりますので、税理士または所轄の税務署にご確認ください。
※相続登記の申請義務化は、法務省「相続登記の申請義務化について」に基づいています。
※住宅用地特例の割合は、総務省「固定資産税の概要」および横浜市「土地についての特例」に基づいています。取壊し後の取扱いは個別の判断がありますので、資産の所在する区の区役所税務課にご確認ください。
※管理不全空家等・特定空家等の制度は、空家等対策の推進に関する特別措置法(令和5年改正・令和5年12月13日施行)および国土交通省「空き家対策特設サイト」に基づいています。
※媒介報酬の上限は、国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」(令和6年6月公布・令和6年7月1日施行)に基づいています。
※管理業務の報酬水準および業務範囲の割合は、国土交通省「不動産管理業に関する実態分析に係る調査検討業務 報告書」(賃貸住宅管理業者アンケート調査)に基づいています。
※本記事は一般的な情報の紹介であり、個別の投資や売買の判断を勧めるものではありません。


